2020年7月にエーザイから不眠症を効能・効果とするオレキシン受容体拮抗薬レンボレキサント製剤が発売されました。市場では同一作用機序をもつ薬としてスボレキサント製剤が先駆けて発売されています。両剤の違いの一つにCYP3A4を強く阻害する薬との併用禁忌の有無があります。この違いは何処からきているのかを、構造(かたち)から考えます。
確認:
デエビゴ錠(レボレキサント)添付文書より抜粋禁忌薬剤の記載なし!
ベルソムラ錠(スボレキサント)添付文書より抜粋禁忌薬剤の記載あり!
レンボレキサントとスボレキサントの構造を比較すると、レンボレキサントの構造中のフェニル基にはフッ素原子(F)が存在しています。
レンボレキサント
スボレキサント
F原子が存在すると、その特徴によって代謝により分解されにくくなります。(くすりのかたち,p.120-125,南山堂, 2013.)
F原子の置換基の特徴は、①電気陰性度が最強。②大きさは水素原子についで非常に小さい。③F原子と炭素原子の結合は分解されにくい。ですが、特に②、③特徴により代謝を受けにくくなると推測します。(CYP代謝 その一)
したがって、おそらくF原子をもつレンボレキサントはスボレキサントよりもCYP3A4による代謝の影響をうけにくく、CYP3A4を強く阻害する薬と併用しても血中濃度変化が少ないため禁忌ではないのではないかと考えられます。とはいっても、十分な注意が必要なことは忘れてはダメなことは、添付文書の相互作用の項のとおりです。
デエビゴ錠(レボレキサント)添付文書より抜粋