マスク素材のかたち

 2020年12月現在、第2波、第3波と未だおさまる気配のない新型コロナウイルス(COVID-19)です。一方で、一時期薬局の商品棚からトイレットペーパーが無くなるというような、いわゆる紙製品の買い占め騒動にまで発展したマスクの供給も徐々に安定し、現在は比較的安価に入手できるようになりました。

 マスクの種類は用途や機能によって多種多様であり、ファッション性のあるオシャレなマスクまで発売されています。今回はマスクの素材の構造(かたち)からその特徴を見てみましょう。

マスクの種類は大きくわけてガーゼマスク、不織布マスク、ウレタンマスクの3種類と考えます。

①ガーゼマスクは政府から配布されたマスクで、いわゆるア〇ノマスクと呼ばれていたことで話題にもなりました。その素材は綿であり、綿の成分は90%以上がセルロースです。

セルロース

 水酸基(-OH)が豊富に存在するセルロースにはたくさんの水分子が水素結合できます。だから呼気中の水分と結合するガーゼマスクの保湿性は高く、マスクの内部は肌にとっても程よい湿度に保たれると考えられます1)

②不織布(ふしょくふ)マスクは、いわゆる使い捨てマスクで、成分の多くは炭化水素のポリプロピレンポリエチレンです。それを密に不規則に絡み合わせたのが不織布マスクです。

ポリプロピレン
ポリエチレン

 構造をみると鎖状構造で、いかにもからまりやすい様子が想像できます。また、炭化水素は油脂成分であり水分子と水素結合しません。このような特徴から、目をより密にでき花粉やウイルスをカットしやすくなる反面、長時間装着するとムレやすくなるようにマスク内部を最適な湿度に保つことが難しいので、肌荒れの要因にもなりうると考えられます。

③洗えるマスクとして知られているウレタンマスクは、ウレタンが重合したポリウレタンからできています。

ウレタン
ポリウレタン

 合成方法によって架橋(網目)構造を構築できるポリウレタンは、弾性1)をコントロールしやすく、他素材よりフィットした製品(耳が痛くないなど)をつくれます。水分子との水素結合も可能な構造のため保湿性も期待できます。

④ ちなみにトイレットペーパーの原料はパルプと言われる木材由来の繊維です。それ以外も現在は牛乳パックや新聞紙など古紙を再利用した古紙がトイレットペーパーの原料を占めているようです。そのような古紙の素材もパルプです。ここでポイントとなるのは、パルプの成分は複数の物質の混合物で、セルロースの割合が50%程度ということです。一見、同じセルロースを成分とするので「マスク不足⇒トイレットペーパーも不足する」と思うかもしれませんが、①で説明した綿とはセルロースの割合が全く異なります。つまり、同じセルロースを成分とするといっても、原料の素材が異なれば、成分の組成(割合など)は全く異なり、素材が異なる以上マスクの生産量がトイレットペーパの生産量に影響することはないのです。このように素材から冷静に考えるとあの騒ぎは何だったのかと思えますが、パニック時には思いもよらぬことが起こってしまいますね。

おことわり・・・今回の内容はあくまでも素材のかたちから読み解ける特徴であり、マスクの良し悪しの判断基準ではないですよ!!

1)水素結合の保湿性と皮膚の環境について、及び、ポリウレタンの弾性について、レシピプラスVol.17No.3,p.84-92,南山堂, 2018.に詳しく記してます。ご興味のある方はご覧ください。