2018年6月に発売された脂質異常症治療薬のパルモディア®錠 0.1mg(一般名:ペマフィブラート)も発売からすでに2年が経ち処方量も増えていることを実感します。そこであらためてパルモディア錠をはじめとするフィブラート系製剤が作用を発揮する理由を考えてみました。
ペマフィブラートは核内受容体であるペルオキシゾーム増殖剤応答性受容体(peroxisome proliferator-activated receptor;PPAR)のサブタイプの一つであるPPARαの作動薬としてはたらき、血漿トリグリセライド(TG)濃度の低下、HDL-コレステロールの増加等の作用を示します。PPARの生体内リガンド(生体内でPPARと結合して作用する物質)としてHETE(hydroxy-eicosatetraenoic acid)が同定されています。
HETE は、アラキドン酸の代謝により生じる副産物であり、いろいろなかたちに変換できる(コンフォメーション変化)性質があります。
HETEをいろいろなコンフォメーションにするとその中のどれかがフィブラート系製剤と類似性をもつ事がわかります。類似性をもつ薬剤はHETEと同じようにPPARαと結合でき、作用を発揮すると考えられます。
ペマフィブラートは他のフィブラート系製剤よりもPPARαへの選択性が高いと説明されます。薬の構造では、部分的な構造が大きいほどまたは構造の枝分かれが多い(構造が複雑である)ほど選択性が高くなります(くすりのかたちp.84〜 など)。ペマフィブラートの構造をHETEと重ねると、非常に類似した構造でありながら大きくはみ出る部分構造もあります。これが選択的 PPARα モジュレーター (Selective Peroxisome Proliferator-activated receptor-α modulator: SPPARMα)と呼ばれる所以ではないかと思えます。構造が大きい、複雑というだけでも重要な情報が得られるという典型例です。