RNAとDNA その1

抗ウイルス薬などの説明をみると、ほとんど場合でRNAやDNAという単語を見かけると思います。RNAとDNAについては「何が違うの?」というような疑問もあり、薬の理解を難しく感じてしまう根源なのかもしれません。そこでここでは、単純に両者の違いを見ていきます。

RNAもDNAも両方とも核酸と呼ばれる仲間です。構造を見ると違いはわずかであり、2’位の水酸基(OH基)の有無です。RNAはリボ核酸、つまりリボース(R)+核酸(NA)の略語で、DNAはデオキシ(”デ”はなくなる+”オキシ”は酸素原子(O)つまり「Oがなくなった」)リボ核酸の略語、つまりOがなくなったRNAという意味で覚えやすいと思います。

 両者はわずかにOH基一つの違いですが、それだけで大きな差が生じます。OH基は水素結合を形成するので、水分子などが集まりやすくかさ高くなります。またOH基は求核反応を起こしやすい性質もあります。DNAが二重らせん構造を形成することは皆さんもよくご存知だと思いますが、2’位にOH基がないことで、より強固な二重らせん構造を形成でき化学反応もしにくくとても安定しています。生物の遺伝情報(ゲノム)は厳重に保持、保管される必要がありますが、このように安定なDNAはゲノムを記録、保持、保管するのにとても適しています。一方、RNAも二重らせん構造を形成することができますが、OH基のかさ高さが邪魔になり強固に形成できず、一重鎖で存在することが多くなります。また、DNAと比べると化学反応に関与しやすくアクティブだといえます。病気の発現はゲノムに基づく活動と考えることもできますが、ゲノムに基づく活動にはアクティブな性質のRNAが関与しやすく、薬剤が作用するのはRNAに対することが多いと考えられます。

 ここまでの説明は一般的な性質で多くの例外はありますが、DNA、RNAに関する薬の説明を読むときの一つの指標にしていただけるのではないかと考えています。鉄壁な守備でゲノムを守るディフェンス(D)核酸(NA)略してDNA!ゲノムに基づいて様々な動きをみせるリアクション(R)核酸(NA)略してRNA!みたいな感じで…。